湊かなえ『往復書簡』感想※ネタバレ注意(素人小説書評)

久しぶりに、湊かなえさんの小説を読みました。

読んだのは、『往復書簡』です。

『往復書簡』↓

湊かなえさんの小説の感想記事を書くのは初めてですが、私自身湊かなえさんの小説が大好きで、かなりの作品を読んできました。

なので、私が好きな小説家を聞かれた際に、いつも答えているのが湊かなえさんです。

デビュー作の『告白』はもちろん、『Nのために』や『境遇』、『少女』、『リバース』など、湊かなえさんの小説は本当に面白いものばかりですよね。

今回は、『往復書簡』の感想を述べていきます。

※本記事の性質上、ネタバレを含みます。

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どんな話?

『往復書簡』では、人物同士の書簡、つまり手紙のやり取りによって、物語が紡ぎだされていきます。

一つ目の話は、高校時代の同級生との手紙のやり取りで、同級生の腹の内が明かされていく話です。

それに伴い、同級生の人物を周りの人たちがどのように考え、またどのようにとらえているのかが描かれていきます。

二つ目の話は、小学校時代の恩師の先生のお願いを受けた高校教師が、先生が気にしている生徒の現状を見てきて、それを先生に手紙で報告するという話。

何人かの話を聞いていく中で、高校教師の男性は教師としての自分、そして人間としてさまざまなことを再考します。

三つめの話は、中学生のころからのカップルが、遠い国をまたいでエアメールで想いを伝え合う話です。

海外にボランティアとして派遣された男性と、彼女とのとの間にある昔の事件を紡いでいきます。

「書簡」を基調とし、そこから物語が浮かび上がる、美しい短編ミステリーです。

感想※ネタバレ注意

『往復書簡』は、非常に美しい作品でした。

ここで言う「美しい」とは、この小説の何もかもが美しいということです。

例えば、内容がすらすらと頭に入ってくる、美しい文章でストーリーが描かれています。

そのため、登場人物の心の内が手に取るようにわかるため、ストーリーにも感情移入しやすくなってしまい、美しい話だと感じているのでしょう。

 
私個人的には、湊かなえさんの「人の証言や回想でストーリーを紡いでいく」という物語の書き方が、とても読みやすくて好きです。

『告白』では、生徒や先生の供述で事件が明るみになっていき、衝撃的なラストを迎えました。

『Nのために』でも、登場人物のそれぞれにNというイニシャルがつき、それぞれの供述がそれぞれが思うNのためのものであり、それが物語を結末へと導きます。

今回の『往復書簡』では、その手段に使われたのが「手紙」です。

普段メールやラインなんかに慣れてしまっている身としては、手紙という連絡手段は少し新鮮に感じました。

同時に、自分の手で書く手紙には、自分の思いをのせられるのかなという気もします。

実際、小学生のときに手紙を書いていた時は、子供ながらにもいろいろと書きたいなと思ったような記憶があります。

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そのように考えると、手紙って不思議な連絡手段ですよね。

なぜか、次々と筆を走らせ、便せんに文字を書き起こしたくなってしまいます。

『往復書簡』では、登場人物が書く手紙が、書きたい欲求に満ち溢れているように感じました。

このようなことを表現できるのは、やはり湊かなえさんの美しい文章あってこそだと思います。

不覚にも、誰かに手紙を書きたくなってしまいました。

 
それにしても、手紙を通して事件を明らかにしていくというのは、本当に面白いです。

特に面白かったのは、三つめの話。

三つめの話である「十五年後の補習」という話では、カップルが過去に体験した事件が描かれます。

事件としては、二人の同級生のいじめの仲裁に入った彼女が、いじめが原因で起こった火事に巻き込まれ、危うく命を落としそうになったという話です。

この火事から彼女を救ったのが、手紙のやり取りをしている海外ボランティア中の彼。

二人の手紙のやり取りは、日常の何気ない話を交えながらも、15年前のその事件の真相を明らかにしていきます。

その中で、姿が見えないからこそ相手を思いやる気持ちと、相手のためにさりげなく嘘をつくという、深く美しい愛も描かれていました。

 
まとめると、湊かなえさんだからこそ書ける、美しい銃愛ミステリー作品でした。

ちょっとしたミステリーや感動ものが読みたいという人には、ちょうど良い作品なのではないかと思います。

まとめ

湊かなえさんの『往復書簡』は、手紙を通してストーリーが紡がれていく、美しいミステリー小説です。

文章自体も美しいので、内容もすらすら頭に入ってきます。

湊かなえさんの作品を何か読んでみたいと思った人は、とりあえず『往復書簡』から読んでみてもいいかもしれません。

まあ、湊かなえさんの作品は全部面白いので、どれを読んでもはずれはないでしょう。

『往復書簡』はもちろん、湊かなえさんの作品をぜひ読んでください。

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