近頃、いろいろと面白い小説を読みました。
その中でも非常に面白かったのが、今回紹介する七尾与史さんの『偶然屋』です。
『偶然屋』↓
七尾与史さんは、『死亡フラグが立ちました』シリーズでおなじみの、ユーモアにあふれながらも臨場感のあるミステリーが評判の小説家。
私はこれまでに、『死亡フラグが立ちました』シリーズや『死なせない屋』などの作品を読んで、七尾与史さんの作品の魅力にはまりました。
そして、今回読んだ『偶然屋』も七尾与史さん独特の世界観が味わえる最高の作品ゆえ、どうしても紹介しておきたくなったのです。
なので今回は、七尾与史さんの『偶然屋』の感想を述べておきます。
※記事の性質上、ネタバレを含みます。
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あらすじ
就職活動中の水氷里美は、電信柱に貼ってあった求人広告に目を留めます。
そこに連絡すると、面接会場にパチンコ屋が指定されました。
そのパチンコ屋で運を発揮し、かつ女性の問題を解決した美里は、油炭という男性にアクシデント・ディレクターとして雇われることになります。
アクシデント・ディレクターは、いわゆる偶然を演出する仕事。
オフィス油炭で働き始めた美里は、アクシデント・ディレクターとして、油炭や最強格闘少女クロエとともに、自身の仕事に奮闘します。
そんなオフィス油炭に、何者かの黒い影が忍び寄ってきます。
ユーモアにあふれながらも、張り巡らされた伏線が狡猾なミステリーを生み出す、最高のエンターテインメント小説です。
感想※ネタバレ注意
今日自分自身に起こったことが、もしも誰かに仕組まれていたものだとしたら?
このように、偶然を装ってターゲットに狙った行動をさせる、アクシデント・ディレクターという仕事を題材にしたのが、本作『偶然屋』。
この小説の面白いところは、アクシデント・ディレクターという職業です。
偶発的な出来事を装いながら、ターゲットを狙った通りに行動させる。
こんな職業が実際にあったらという発想自体が、すでにこの小説を面白くさせています。
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七尾与史さんの小説には、ぶっ飛んだ個性的をもつキャラクターが登場し、ストーリーを面白おかしく彩ってくれます。
『死亡フラグが立ちました』シリーズだと、何でもできる天才の本宮さんやドス黒いドS美人編集長の岩波さんですね。
それに反して、本作『偶然屋』にはこれまでのキャラクターほどぶっ飛んだ人物はいないように思えました。
強いて言うなら、超強気で辛辣な発言をする、リアル・ヒットガールと形容されたクロエちゃんが個性的と言えるでしょう。
主人公の美里は頭がキレる女性で、油炭もアクシデント・ディレクターという以外は、特に変わったところはありません。
なので、『偶然屋』を読んでいると、これまで七尾与史さんの小説で出てきたようなぶっ飛んだキャラクターがいないという点が、どことなく新鮮さがあって良かったでしょう。
というより、本宮さんや岩波さんがぶっ飛びすぎているだけなのかもしれませんが。
そして、今作の敵である「仏」も、かなり用心深く頭のキレる敵でした。
「仏」はいろいろな人物の相談に乗りながら、その人物の人生を悲劇に導こうと画策している人物です。
自分が話した言葉で相手を操る、いわゆる洗脳を行っています。
「仏」の目的は、ルワンダ内戦のような民族間の対立を利用したジェノサイドを引き起こすこと。
ちなみに、先ほどから出てきている「仏」は、「ほとけ」ではなく「フツ」です。
これは、ルワンダ内戦で民族対立を起こしたフツ族に由来します。
このようなちょっとした伏線も随所に張り巡らされていたので、読んでいくうちに「これはあのことだったのか」と気づくことができました。
まとめ
七尾与史さんの『偶然屋』は、ユーモアとミステリーが詰まった、読み応えのある珠玉の名作です。
感想もまだまだ語りつくせないほどありますが、あまり書きすぎると支離滅裂になってしまうので、このくらいにしておきます。
ミステリー好きに人なら楽しめる作品だと思うので、興味のある人はぜひとも読んでみてください。
また、『死亡フラグが立ちました』シリーズや『死なせない屋』など、七尾与史さんのほかの作品もよろしくお願いします。
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