男女問わず、幅広い世代から人気のある小説家の有川浩さん。
有川浩さんは、『塩の街』で電撃小説大賞を受賞しデビューし、その後何作も名作を世に出し続けている、私の大好きな小説家の一人です。
『フリーター、家を買う』などはドラマ化し、『図書館戦争』や『植物図鑑』などは映画化されているので、多くの人が知っていると思います。
今回私が読んだ有川浩さんの作品は、『ストーリー・セラー』。
これまで何作か有川浩さんの作品を読んだことはありますが、私個人的には、今のところ『ストーリー・セラー』が一番好きです。
そこで今回は、有川浩さんの『ストーリー・セラー』の感想を述べていきます。
※本記事の性質上、ネタバレを含むのでご注意ください。
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どんな話し?
最初に、『ストーリー・セラー』がどんな話なのか、簡単に紹介しておきます。
『ストーリー・セラー』は、前半と後半の二つの話があり、それぞれ小説家の妻とその夫の話しです。
前半は、小説家の妻が複雑な思考をするごとに脳が劣化し、最終的に亡くなってしまうという病気にかかってしまう話。
小説家という複雑な思考を要する妻と、その夫の生き様が描かれる話です。
後半は、逆に小説家の妻を身を挺して支えてくれている夫に、悪性の腫瘍が見つかってしまうという話。
こちらも同様に、小説家の妻と病気を患った夫の生き様が描かれています。
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感想
『ストーリー・セラー』の感想として一番に思い浮かぶのは、小説好きの気持ちを代弁してくれたなというものです。
前半の話の中で、小説を「書ける側」と「読む側」という対比が出てきます。
「書ける側」というのは文字通り、小説を書ける人、いわゆる小説家の人を指し、同様に「読む側」というのは、小説を読む人のことです。
そして、前半の話の中で小説を「読む側」の夫が、「小説を書きたいと思っても書けない」と言います。
これは、小説好きの人の中には経験があるという人も多いのではないでしょうか。
私自身もそうですが、あんな小説家みたいな話しが書きたいと思っていざ書こうとしても、なかなか筆が進みません。
そのたびに、私は小説を読むのはできるけど、書くことはできないのだなと思っていました。
だから、「書ける側」の人はすごいなと、常々思っていましたが、この話しの中の夫も同じことを述べています。
このように、小説を書こうと思っても書けない人の気持ちを代弁してくれているのは、さすが有川浩さんだなと思いました。
そして、ただ気持ちを代弁してくれるだけではなく、「読む側」の人たちをフォローすることも忘れてはいません。
直接本文に書いてあるわけではありませんが、この話からは「読んでくれる人がいることのありがたさ」がひしひしと伝わってきました。
この点に関しては、前半の話だけでなく後半の話にも共通しています。
妻の書く小説を「大好きだ」といって読んでくれる夫がいつもいてくれるというのは、小説家としてはもちろん、一人間としてとてもうれしいことなのではないでしょうか。
僕自身、小説は書けませんが、このつたないブログを読んでくれる人がいるというのは、とてもうれしいことです。
おそらく、有川浩さんは『ストーリー・セラー』の話を通して、読者である我々に「読者でいてくれてありがとう」ということを伝えたかったのではないでしょうか。
あくまで私の解釈ですが、「読者に感謝を示す作品」を生み出すというのは、簡単なことではないと思います。
加えて、私が『ストーリー・セラー』を読んで感じたのは、「時間」のありがたさと「選択」することの大切さです。
前半の話の中で、思考するごとに脳が劣化していくにもかかわらず小説家でいることを辞めない妻は、限られた「時間」の中で、命よりも小説を書くという「選択」をしました。
それほどまでに、小説家の妻は「話を書く」ということが好きであり、辞められなかったのです。
自分がその妻と同じ状況に陥った場合、どちらを選ぶのだろうかと、とても深く考え込んでしましました。
そこからさらに発展し、そもそも私に「命に代えてでもやりたいことはあるのだろうか」とも悩みました。
その一方、限られた「時間」の中で「選択」ができるということの素晴らしさも、同時に感じました。
そして最後に、とても印象に残った言葉があります。
それを私なりに言い換えて言うと、「小説は心の弱い部分をさらけだしたもの」というものです。
確かに、小説は作者の頭の中を描き出しているので、心の弱い部分を表現しているものでもありますね。
まとめとしては、『ストーリー・セラー』はとても感動的な話でした。
読書好きとして共感できる部分も多かったので、ところどころで「確かにな」と思いながら楽しく読みました。
なので、小説家になりたい人なんかは、一度『ストーリー・セラー』を読んでみてもいいかもしれません。
小学生の読書感想文みたいになってしまいましたが、結局何が言いたいかというと、かなりおすすめの作品ですよということです。
いつも面白く、感動的な話を生み出してくださる有川浩さん。
今後の作品も楽しみに待っています。
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