この前本屋で何を買おうか悩んでいると、ふと目についた本が、今回紹介する『余命10年』。
『余命10年』↓
文芸社文庫から出版されている、小坂流加さんという方の小説です。
最近いろいろな本屋で目立つところに置いてあるので、見たことがあるという方、もうすでに読んだという方もいることでしょう。
2017年の5月に初版が発行されてから、わずか2カ月で5刷されるほど、多くの人々に読まれている作品です。
感想としては、かなり胸を打たれる作品であり、かつさまざまなことを考えさせられる作品でした。
そこで今回は、小坂流加さんの『余命10年』の感想を述べていきます。
※本記事の性質上、多少のネタバレを含みます。
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どんな話?
題名の通り、長く生きれて10年という余命を背負って日々を生き抜く、栞莉(しおり)という20歳の女性の話。
余命を知った時から、人生における取捨選択をしていき、働くことなど、いろいろなことをあきらめていく栞莉。
とはいえ、家族や仲の良い友人と一緒に楽しい時間を過ごすなど、日々を無駄にすることなく生きていきます。
そして、命が消えるということに対する恐怖をも乗り越えようとしていく栞莉ですが、そんなときに和人という男性に恋に落ちることに。
言葉で言い表せないほどの感動を与えてくれる、これまでにない恋愛小説です。
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感想※ネタバレ注意
ここから、『余命10年』の感想を述べていきます。
本作を読み始めたときは、あと10年という限られた時間は、長いのか短いのかよくわかりませんでした。
ですが読み進めていくうちに、10年という限られた時間は短すぎる、と感じました。
特に、リミットが決まっている人だと、より短く感じるかもしれません。
栞莉が10年という時間の中でできたことは、趣味のコスプレや衣装づくり、マンガを描くこと、そして大好きな人と一緒に過ごすという、たったこれだけのことです。
10年という時間があるのにもかかわらず、たったこれだけのことしかできないのは、私だったらやり足りないことばかりで、もっと生きたいと強く願います。
そして何よりもつらいのが、大好きな人とずっと一緒にいられないということ。
栞莉は、大好きな和人に「結婚しよう」と言われますが、その時点で余命が3年しかないということで申し出を断り、自ら和人に別れを告げました。
本当は命耐えるまで一緒にいたいはずなのに、命のともしびが消える瞬間に立ち会わせたくないという栞莉の心遣いから、別れを切り出したのです。
本気で結婚したい人だからこそ、自分の最後の姿は見せられない、でも本当はずっと一緒にいたいという正反対の感情がぶつかった末、栞莉は別れることを選びました。
この栞莉の勇気は、言葉では表せられないほどすごいものなのでしょう。
『余命10年』のストーリー上で、栞莉があきらめたものの中で最も大きかったものは、間違いなく恋人の和人です。
ここから後のページは、涙なしには読むことはできませんでした。
もし自分に残された時間が10年だったら、私は何を選び、何をあきらめるのだろうかと、本作を読みながら考えていました。
正直なところ、仕事や趣味なんかはあきらめることはできそうです。
ですがやはり、恋人をあきらめるということは、私にはできません。
余命が10年しかないとわかっていても、最後まで一緒にいたいし、相手には一緒にいてほしいと思います。
『余命10年』からは、一人の女性の生きざまを通して、人間の強さと弱さ、そして一人の寂しさを改めて教えてもらいました。
そして、何かを切り捨てることの勇気がいかに重いものであるのかということを、再確認させてもらうことができました。
まとめ
これまでの感想を一言で述べるのなら、本当に心が洗われつつも、かなりいろいろなことを考えさせられる作品であるということです。
ただ感動するだけでなく、余命10年の女性を通して、人間の強さと弱さを垣間見ることができた気がします。
何か悩みがあるという人は、人生の選択を増やす機会だと思って、ぜひ本書を読んでみてください。
そして最後になりましたが、作者の小坂流加さんは本書の編集が終わった直後に、病状が悪化して亡くなってしまったとのこと。
最後になりますが、素晴らしい作品を残してくださった小坂流加さん、ありがとうございます。
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