久しぶりに、かなり人に紹介したくなる小説を読みました。
それは、川村元気さんの『億男』です。
2018年10月19日(金)から実写映画が公開されるということもあり、最近かなり注目を集めている作品ではないでしょうか。
ちなみに、2016年に映画化された『世界から猫が消えたなら』の原作小説を書いたのも、川村元気さんです。
世の中にはたくさん面白い小説があり、私も数々の小説を読んできましたが、その中でも『億男』は非常に面白いうえ、かなり考えさせられる内容でした。
今回は、川村元気さんの『億男』の感想を述べていきます。
※原作小説の感想であり、映画の感想ではありません。
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あらすじ
弟の借金を肩代わりし、妻と娘と離れて暮らす主人公の一男は、福引の景品で当たった宝くじの一等が当選し、一気に3億円もの大金を手に入れます。
しかし同時に、一気に莫大なお金が手に入るという不安が募り、大学時代の親友であり億万長者である九十九(つくも)に、お金と幸せについて相談に行きます。
九十九の提案により3億円を現金にして九十九のもとを訪れた一男は、九十九と一緒に大金をはたいてどんちゃん騒ぎ。
ですが目が覚めると、一男の3億円と九十九が消えていました。
消えた3億円と九十九を見つけ出すために、一男は九十九の知り合いのお金持ちのもとを訪れます。
お金と幸せについて言及していく、川村元気さん渾身の一作です。
感想
『億男』の主題は、ずばり「お金と幸せ」です。
その「答え」を、主人公の一男や九十九、その他の登場人物たちが追い求めています。
ただ結論から言うと、この話の中でお金と幸せについての明確な答えはでてきません。
というよりも、明確な答えが出てこないからこそ、私たち読者がそのことについて考えさせられるようになっています。
言い方を変えるならば、この本は、人はお金とどう付き合っていくのかと言うことを問うています。
もっと言うならば、お金があれば自分の望みがかなえられるのだろうかということも問われている気がしました。
主人公の一男は、借金を返済し、離れ離れになった家族ともう一度暮らすため、九十九とともに消えた3億円を必死に追いかけていきます。
ただし、ここで注目すべきなのは、大金があれば家族がもう一度一つになれるのかということ。
一男は、大金が手に入れば家族がまた一つになると思っていますが、妻はお金よりも家族でいたいという「気持ち」のほうが大切だと言います。
いくら借金があろうが、家族が一丸となって問題に直面すれば、強い「気持ち」さえあればお金の問題は大したことではないということです。
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要するに、一男は借金という大きなお金を抱えてしまったため、何よりもまずお金を優先させてしまっていたのです。
そのせいで、家族という絶対にお金では買えない大切なものを、自ら失っていたのでした。
ここからは、完全に私の持論になります。
「お金では買えないものがある」とよく言いますよね?
これは、確かに一理あると思います。
ですが一方で、お金がないと健康で文化的な最低限度の生活は営めません。
そして、幸せとは何でしょうか?
私が思うに、幸せとは自分の欲が満たされていることを言うのだと思います。
たとえば私の場合、好きな仕事をし、好きな人と一緒に暮らし、休みの日には自分のやりたいことをとことんできる。
これが私にとっての幸せです。
そしてここには、好きな仕事をしたいという私の欲、好きな人と一緒に暮らしたいという欲、休みの日に好きなことをしたいという欲があります。
このように、欲を満たしているからこそ、人は幸せと感じることができるのではないでしょうか。
ということは、幸せを得るためにはお金は必要ですね。
しかし同時に、幸せを得るにはお金で買えないものも必要であることは確かだと思います。
その最たる例が、愛情ではないでしょうか。
本当に誰かを愛すること、そして愛されることは、お金を必要としません。
ということは結局、お金は必要であるし、お金で買えないものも必要だということですね。
まとめ
川村元気さんの『億男』は、間違いなく傑作です。
お金と幸せについて、非常に深く考えることができました。
何か本を読んでみたいと思ったら、ぜひとも『億男』を読んでみてください。
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