2018年の本屋大賞にノミネートされた作品である、『崩れる脳を抱きしめて』を読みました。
『崩れる脳を抱きしめて』↓
『仮面病棟』や『屋上のテロリスト』、『白銀の逃亡者』などでおなじみの、知念実希人さんの作品になります。
知念実希人さんの作品は大好きでいくつか読んできましたが、『崩れる脳を抱きしめて』はその中でもかなり面白い作品でした。
今回は、『崩れる脳を抱きしめて』の感想を述べていきます。
※記事の性質上、ネタバレを含みます。
関連記事
知念実希人『仮面病棟』感想※ネタバレ注意(素人小説書評)
スポンサーリンク
あらすじ
研修医として葉山の岬病院にやってきた碓氷蒼馬は、グリオブラストーマ(膠芽腫)で残りの寿命が幾何とない弓狩環(ゆがりたまき、ユカリさん)と出会います。
ひょんなことから午後の時間をユカリさんとともに過ごすことになった碓氷先生は、自分が抱えている暗い過去や借金について、なぜかユカリさんに話してしまうのです。
一方のユカリさんも、心のうちに抱えるあらゆることを碓氷先生に話し、しだいに二人は惹かれ合っていきます。
そして、二人が抱える問題を解決しあった後、碓氷先生の研修期間が終わり、碓氷先生は葉山の岬病院から広島に戻りますが、その後ユカリさんの訃報を受けます。
自分が恋した女性の幻影を追い求める碓氷先生ですが、そこにはあらゆる人物の複雑な思惑が絡んでいました。
王道の恋愛小説でありながらも、最後までダマされ続けるミステリー小説です。
感想※ネタバレ注意
『崩れる脳を抱きしめて』を読んでみて思ったのは、「そりゃあ本や対象にノミネートされるだろうな」ということです。
患者の女性に恋をしてお互いに惹かれ合うが、不治の病である女性は亡くなってしまう。
ここまでだと、ごくありきたりな恋愛小説でしかありませんが、知念実希人さんはその先を何十歩もいっています。
ユカリさんの死にはあらゆる人物の思惑が複雑に絡まっており、最後の最後まで何が真実なのかはわからないストーリー展開になっているのです。
恋愛とミステリーが複雑に絡み合い、見事なまでのストーリーを紡ぎだしている。
これほどのストーリーが書けるのは知念実希人さんだからであり、本屋大賞にノミネートされるのも大いに納得できました。
スポンサーリンク
上記したように、『崩れる脳を抱きしめて』は、不治の病であるグリオブラストーマ(膠芽腫)を患ったユカリさんと、その担当医である碓氷蒼馬の物語です。
ユカリさんは莫大な資産を親族から受け取り、それを使う間もなく不治の病にかかってしまいます。
そして、その財産を狙った親戚が必要にユカリさんのことを追いかけてくるという恐怖から、外出恐怖症になってしまいます。
一方の碓氷先生は、父親が借金を残し、ヨーロッパへ行って他の女性と結婚したことから、父親を恨みながら、常に金のことを考えていました。
そんな二人が徐々に心を開いて、お互いの抱える問題を解決し合っていく。
そして、お互い恋に落ちてしまうが、研修期間が終わった碓氷先生は、元いた病院に戻ってしまい、ユカリさんの訃報を受けます。
ここまでのストーリーも、緻密な描写で描かれているため非常に読みごたえがありますが、『崩れる脳を抱きしめて』が面白くなるのはむしろこの後からです。
ユカリさんの訃報を聞いた碓氷先生は、ユカリさんの死の真相を知るために葉山の岬病院に行きますが、なぜか病院ぐるみでユカリさんはいなかったということにされ、ユカリさんとの思い出は全部碓氷先生の妄想だったということにされてしまいます。
ですが、ユカリさんとの思い出が詰まったものを見つけ出した碓氷先生は、ユカリさんの幻影を求めて彼女の足取りを追いかけていきます。
そこからはさまざまな人物の事情、そして感情が複雑に絡み合っており、読み進めれ旅に謎が深まっていくので、本当にページをめくる手が止まらなくなりました。
読んでいただければわかるのですが、本当に続きが気になって仕方ありません。
ここまで時間を忘れて没頭した小説は久しぶりです。
そして結末は、超王道の恋愛小説にふさわしいものでした。
なので、恋愛小説やミステリー小説が好きな人には、本当にお勧めできるすばらしい作品です。
もちろん、それ以外の人にもかなりおすすめの作品なので、ぜひとも『崩れる脳を抱きしめて』を読んでみてください。
スポンサーリンク