知念実希人『ひとつむぎの手』感想※ネタバレ注意(素人小説書評)

『レゾンデートル』に引き続き、知念実希人先生の作品を読みました。

今回読んだのは、『ひとつむぎの手』です。

『ひとつむぎの手』↓

『ひとつむぎの手』は、2019年度の本屋大賞ノミネート作品になりました。

なので、知念実希人先生は、昨年の『崩れる脳を抱きしめて』に引き続き、2年連続で本屋大賞にノミネートされたことになります。

知念実希人先生は、本当に勢いのある作家さんであるということがわかりますね。

今回は、『ひとつむぎの手』の感想を述べていきます。

※記事の性質上、ネタバレを含みます。

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あらすじ

心臓外科医の技量を学ぶために日々過酷な業務に追われている平良祐介(たいらゆうすけ)は、医局の教授である赤石に3人の研修医の指導医になるように言われます。

3人の研修医を入局させれば希望の病院へと派遣してもらえることを条件に、3人の研修医を指導していきますが、さまざまな問題が待ち構えていました。

同時に、赤石教授の論文に不正があるという告発状も送られ、告発状の「犯人」を見つけ出すというミッションも課せられます。

通常業務と3人の研修医の指導、そして告発状の「犯人」捜しと数々の出来事が押し寄せてくる中、祐介は医師として、そして人として、必死で患者と向き合っていきます。

医者として、人として大切なものは何かを描き出した、感動の物語です。

感想※ネタバレ注意

これまで、ほとんどの知念実希人先生の作品を読んできました。

『仮面病棟』や『屋上のテロリスト』、『白銀の逃亡者』、『天久鷹央』シリーズ、『崩れる脳を抱きしめて』などを読みましたが、『ひとつむぎの手』はこれらの作品とは一線を画しています。

知念実希人先生の作品はさまざまな事象が複雑に絡み合って物語が紡ぎだされていく作品が多いですが、『ひとつむぎの手』は純粋に医者とは何かという点に焦点が置かれています。

一応告発状の「犯人」を探すというミステリー要素もありますが、それよりも医者としての在り方、ひいては人として何ができるのかという点に重点が置かれていました。

ゆえに、王道のヒューマンドラマがみどころな作品です。

 
平良祐介は一流の心臓外科医になりたいという強い思いゆえ、心臓外科の過酷な業務に耐えています。

ですが、一流の心臓外科医である赤石教授とともにオペに入って技術を学ぶ機会は少なく、関連病院への出向の機会にも恵まれないため、技術を学ぶことができないでいました。

その一方で、まじめな性格ゆえか患者が望んでいることを一番に考え、真摯に向き合うことのできる素晴らしい医者であります。

また、内科医にも負けないくらいの医療知識も持っており、心臓外科以外どこでもやっていける外科医の実力を持っています。

それでも、祐介は心臓外科医になる夢をあきらめきれません。

そのため、死に物狂いで3人の研修医を心臓外科に入局させ、第一希望の病院へと出向しようとするのです。

 
ですが、最初は研修医たちとの関係がうまく築けず、告発状の件にも振り回されてしまいます。

しかし、普段から医者として患者に向き合っていく祐介の態度やアカデミックに富んだ祐介の主張、外科医としての祐介の技術をみていった研修医たちは、しだいに祐介のことを信頼していきます。

同時に、祐介も研修医たちの指導を通して、医者の本分や人としてどうあるべきか、そして研修医たちを心臓外科に入局させるのが本当に彼らのためになるのかと、悩み始めるようになりました。

 
読んでいて思ったのは、平良祐介はめちゃくちゃかっこいい人だなということです。

医者として患者に真摯に向き合い、研修医のことを考え、時には厳しい指導をする。

このように、当たり前にすべきことを当たり前にできる人間は、実際のところあまりいないのではないでしょうか。

読んでいてとても清々しくなるとともに、非常に感動しました。

王道の人間ドラマものが読みたいという人は、ぜひとも『ひとつむぎに手』を読んでみてください。

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