今回もまた、天沢夏月さんの小説を読みました。
※前回読んだ天沢夏月さんの小説はこちら↓
天沢夏月『八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。』感想※ネタバレ注意(素人小説書評)
今回読んだのは、青春小説に定評のある天沢夏月さんの原点となった『サマー・ランサー』です。
『サマー・ランサー』↓
『サマー・ランサー』は、天沢夏月さんのデビュー作。
読んでみると、高校生特有の悩みや葛藤が描かれるとともに、その時にしか味わえない青春も色濃く描かれていました。
そこで今回は、『サマー・ランサー』の感想を述べていきます。
※本記事の性質上、ネタバレを含みます。
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どんな話?
小中学生のころは、剣道界において「神童」とまで呼ばれた主人公大野天智。
剣道を教え込んでくれた祖父が亡くなったのをきっかけに、一切竹刀が握れなくなってしまう。
そんな天智が入学した高校で、木と木がぶつかり合うような音を聞いて見に行った先には、槍をもって熱く練習に励む人たちがいた。
そこで槍道(そうどう)と出会った天智は、同級生の羽山里佳の強引な誘いもあって、槍道部に入部することに。
一度剣を捨てた少年が、槍をもって奮起する姿とともに、高校生ならではの悩みや葛藤、そして亡き祖父への思いなどが描かれる、最高の青春小説です。
感想※ネタバレあり
読んだ後に一番感じたのは、仕事終わりにビールを一杯飲むときの「あ~」という感じ。
つまり、読み終えた後になぜか「やり切った感」を感じたのです。
おそらく、私にとって『サマー・ランサー』はそこそこの読みごたえがある一方で、そんなに重くない話だったということでしょう。
もちろん、ところどころで感動するシーンもありますが、泣くほどのものではなかったです。
どちらかというと天智や羽山、そして槍道部のメンバーの会話など、ユーモアにあふれた笑えるシーンが多かった印象が強いです。
その一方で、天智が抱えている悩みや葛藤は、まさに高校生らしいものではないかと思いました。
特に、スポーツをやっている人なんかは、共感できる部分は多いはずです。
天智は祖父から言われた、「お前には剣道しかないんじゃ」という言葉を常に抱えていました。
そして、剣を振る前に見える「軌跡」が見えない自分に、いつからか疑問を抱くようになります。
「何で俺はじいちゃんのように軌跡が見えないのか」と思い悩むのです。
その悩みにとどめを刺すように、祖父が亡くなってしまいます。
私も高校時代にスポーツをしていましたが、やはり天智のように上手くいかないことに思い悩んだりしました。
今となってはその時の悩みなんて大したものではないと思えますが、子供でもなく大人でもない高校生のころには、そんなちっぽけな悩みでも自分にはすごく重大なことだったのを思い出しました。
すごく懐かしいです。
『サマー・ランサー』のおかげで、高校時代を少しだけ思い出せました。
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そして、竹刀を握れなくなった時に出会ったのが、槍道と槍道部の同級生羽山。
天智の胸の内を聞いた羽山は、「天智は剣道以外にも何でもできる」と言って、槍道部への入部を勧めます。
剣道のことで思い悩む天智に対して、いつも明るく思ったことを素直にしゃべることができる羽山。
かなり対照的な二人の掛け合いと、槍道を通じて縮まっていく心の距離。
本編では二人が恋に発展することはありませんでしたが、槍道というスポーツを通じて、二人には確かに絆が生まれました。
やはり、何か共通するものがある人物とは、心が強くつながっている気がしますよね。
『サマー・ランサー』の天智と羽山をみていると、そんな関係になれる二人をとてもうらやましく思いました。
『サマー・ランサー』の感想を一言で言うならば、自分の青春時代を思い出させてくれ、どことなく懐かしさを味わわせてくれる、最高の小説でした。
もしかしたら、青春真っ盛りの人たちが読むことで、もっと貴重な青春時代を過ごせるかもしれません。
青春小説が読みたいという人は、ぜひとも『サマー・ランサー』を読んでみてください。
ちなみに、天沢夏月さんがこの小説を書いている段階では、槍道というのは『サマー・ランサー』のストーリーにおける架空のスポーツでした。
ですが、どうやら2015年からスポーツとして成立した模様。
ある意味、天沢夏月さんは「預言者」ですね(笑)。
まとめ
天沢夏月さんの『サマー・ランサー』は、読み終わった後に強い余韻を残してくれる、最高の青春小説です。
さっぱりとした小説を読みたいという人には、かなりおすすめの作品になっています。
『サマー・ランサー』で天沢夏月さんの小説を読んだのは3冊になりました。
天沢夏月さんの小説はどれも、読んだ後の余韻を与えてくれる、素晴らしい作品です。
ぜひ、『サマー・ランサー』をはじめ、天沢夏月さんの作品を読んでみてください。
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