長江俊和『出版禁止』感想※ネタバレ注意(素人書評)

2018年最初の記事になります。

今回読んだのは、長江俊和さんの『出版禁止』という作品です。

『出版禁止』↓

紅白本合戦の男性に売れた本第5位ということで、気になって買ってしまいました。

最初は小説だと思って購入したのですが、実際に読み進めていくと、ノンフィクションだということが判明。

個の話を読んでみて思ったのは、実際にこんなことが起こったのかという衝撃、ならびに怖いということ。

本を読んで心から怖いと思ったのは、かなり久しぶりでした。

今回は、『出版禁止』の感想を述べていきます。

※記事の性質上、ネタバレを含みます。

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どんな話?

作家の長江俊和さんは、とある事情によって出版が禁止になった原稿を入手します。

それは若橋呉成というライターが書いた、「カミュの刺客」というタイトルの原稿。

「カミュの刺客」は、ドキュメンタリー作家と心中しようとしたが、一人だけ生き残ってしまった女性へのインタビューを中心に、心中の真相に迫っていく内容でした。

女性へのインタビューを通して心中の真相に近づいていくのですが、その真相が行き着く先には、とんでもない結末が待ち受けています。

これは実際に起こった、他でもないノンフィクション作品です。

感想※ネタバレ注意

最初にも言いましたが、この作品を読んで思ったのは「怖い」ということ。

「カミュの刺客」は、著者の若橋呉成が心中から生還した女性、新藤七緒へインタビューをするところから始まります。

そして、心中事件を捜査した刑事や心中事件の起こった山荘の管理人など、心中事件のあらゆる関係者にも取材をし、あらゆる角度から心中事件の真相を追っていくのです。

ですが、著者の若橋呉成は取材を進めていくうちに、取材相手の新藤七緒に惹かれていきます。

一見ありがちな話に思えますが、問題はこの新藤七緒という女性です。

「カミュの刺客」によると、この新藤七緒は非常に魅力的な女性なのだそうですが、その魅力は正ではなく負の魅力とのこと。

そのため、ドキュメンタリー作家は新藤七緒と心中しようとしたのだと、若橋呉成は考察しています。

 
話を戻しますが、新藤七緒から真相を聞くまで若橋は、この心中事件は「心中」ではなく「事件」だとも考えていました。

というのも、亡くなったドキュメンタリー作家は超有名で数々のヒット作を生み出しており、おまけに女優の奥さんまで我が物にしている、超勝ち組の男性。

そんな人が突然亡くなったといわれたら、誰でも「事件」だと思いますよね。

ですが結論から言うと、これは本当に「心中事件」だったtのです。

もっと正確に言うならば、心中事件というしかありません。

なぜなら、今となっては真相を明らかにすることはできないからです。

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ここからズバリネタバレですが、新藤七緒さんに惹かれた若橋は、彼女と一緒に心中することを決心し、以前心中の舞台となった場所で、心中を決行しました。

なんとなく結果は想像つきますよね。

また女性だけが生き残った…………..

 
 
 
 
 
ではなく、若橋だけが生き残ったのです。

女性は亡くなってしまいました。

ただし、この心中よりも少し前に亡くなっていたのです。

 
実は、新藤七緒と一線を越えてから若橋は、彼女とともに暮らすようになりました。

ですが、新藤七緒は心中の後遺症で苦しみ、夜中に突然嘔吐したりします。

何日もそんなことが続いたとき、若橋は彼女を苦しみから助けるため、彼女の息の根を止めるのです。

そしてその後、彼女の亡骸と一緒に山荘に行き、心中を決行します。

 
以上がネタバレです。

このように話の内容を思い出して書いているだけで、背筋がぞわっとしてきました。

私にはこの話は怖すぎです。

何が怖いかというと、意外かもしれませんが新藤七緒という女性。

新藤七緒は二人の男を負の意味で惹きつけ、結果命を絶つという方向に向かわせています。

確かに、なんかいつも暗いなと思う女性はいますが、負のオーラで人を惹き付けるという女性は、私にはイメージがわきません。

ということは、私は新藤七緒みたいなタイプにあったとしても、惹きつけられないタイプの人間なのでしょうか。

というより、そうであってほしいです。

 
一方、若橋は負の魅力に惹き付けられるタイプの人間だったのでしょう。

なので、最終的に心中という発想に至ったのかもしれません。

ですが、若橋は心中事件を追っていたため、余計に心中という日本独自の考え方に感化され、それを行う者にしか感じることが出来ない悦びに行きついたのかもしれませんね。

 
まとめると、心中事件というノンフィクションを扱った「怖い」話といったところでしょうか。

ですが、ある意味ミステリーと割り切って読むほうが良いのかもしれません。

まとめ

長江俊和さんの『出版禁止』は、私的には怖い話でした。

人間って、意外と簡単に境界を超えるものだということを、少し感じられた気がします。

なので、男性に売れた本5位というのも納得です。

結構えぐい話ではありますが、かなり読む価値はある作品だと思います。

もし機会があれば、『出版禁止』を読んでみてください。

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