SNSで拡散されて大反響を呼んだ『余命10年』。
その『余命10年』の作者である小坂流加さんの新たな小説が発売されました。
それは『生きてさえいれば』というタイトルです。
『生きてさえいれば』↓
『生きてさえいれば』は、『余命10年』よりも前に書かれた作品であったそうですが、『余命10年』よりも後に原稿が見つかったため、後から発行されることになったそうです。
個人的に、『生きてさえいれば』はなかなかの名作で、とても純粋な気持ちで読める作品だと思います。
今回は、『生きてさえいれば』の感想を述べていきます。
※記事の性質上、ネタバレを含みます。
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あらすじ
心臓の病気が原因で入院中のハルちゃん(春桜:はるか)が手にしていた手紙には、住所と「羽田秋葉」という名前が描かれていました。
その手紙を出すのをためらうハルちゃんに代わり、千景(ちかげ)は住所が書かれている大阪まで一人旅立ちます。
大阪についた千景はなんとか秋葉を見つけ出したが、秋葉の妹の夏芽の策略で、秋葉の家に一泊することに。
そこで秋葉とじっくり話すことになった千景は、秋葉の大学時代の東京での恋の話を聞くことになります。
家族との複雑な関係を憂いている秋葉と、「夏と秋」を探している春桜の、超純粋で美しい恋の物語です。
感想※ネタバレ注意
何度も言いますが、『生きてさえいれば』はどこをどう切り取っても、超純粋な恋愛小説です。
どこにでもいそうな平凡な大学生の秋葉は、大学に入学してすぐに参加したサークルの歓迎会で、モデルをやっている2つ上の先輩である春桜に、いきなり「結婚しよう」と言われます。
その理由は、秋葉の名前に「秋」が入っており、また妹の名前に「夏」が入っているというもの。
春桜は「春」で夏芽が「夏」、秋葉が「秋」で春桜のお姉さんが冬月という名前なので「冬」。
春桜はお姉さんとの関係がうまくいっておらず、「春と冬をつなぐことができる夏と秋をどっちももっている」秋葉と結婚することで、姉の冬月と関係を修復していきたいと言っていたのです。
普通に考えれば、そんな理由で結婚しようなどと言いませんよね。
実際、秋葉も片思い中の相手がいたと言うこともあり、訳のわからないことを言っている春桜を鬱陶しく思っていました。
モデルをやっており、周りからちやほやされている春桜に言い寄られて断る男がいるということに、周りの人たちは驚きと嫉妬を隠せません。
ですが、春桜の内面を知っていった秋葉はしだいに春桜に惹かれていき、ついに春桜のことを好きになります。
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しかし運命というのは残酷なもので、春桜と付き合い始めて幸せに浸っているところに、訃報が届くのです。
秋葉の両親が亡くなり、妹の夏芽が重傷を負ってしまい、二度と歩けなくなってしまいました。
妹の世話をしなければならない秋葉は、大学を辞めて大阪に残らなければならなくなります。
同時に、生まれつき心臓が悪かった春桜も倒れてしまい、そこから入院生活を送ることになりました。
それ以降、二人が会うことはなく、千景が手紙を持ってやってくることになったのです。
この話で重要なのは「家族」。
秋葉は父親が蒸発し、再婚した母と新しい父の間に生まれた夏芽とは半分しか血がつながっていないことから、夏芽に嫌悪感を抱いています。
春桜も幼いころに母が亡くなっており、母親そっくりに生まれた春桜は、父から異常にかわいがられ、宝物のように大切に育てられました。
ゆえに、姉の冬月とはわだかまりが生じてしまい、関係がうまくいかなくなってしまったのです。
私はいたって普通の家庭に生まれた人間なので、このような家族がらみの複雑な事情はよくわかりません。
ですが、家族というのは一番身近な存在なので、心のよりどころとなってほしいものです。
なので、家族との関係がギクシャクしているのは、やはり心が安らがないのでしょう。
また、この物語は最初は千景の視点から物語が始まり、秋葉の視点に物語が移っていきます。
そして、その秋葉の長い物語が終わると、再度千景の視点から物語が語られます。
メインは秋葉と春桜の話ですが、千景の視点から語られる春桜をみてから秋葉の話には入れたことで、より一層秋葉と春桜の恋模様が色濃く感じられました。
本当に純粋な美しい恋物語を読みたいという人は、ぜひとも『生きてさえいれば』を読んでみてください。
同じく、小坂流加さんの作品である『余命10年』も、よろしければぜひお手に取ってください。
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