今回読んだ小説は、恩田陸さんの『クレオパトラの夢』。
驚異の記憶力をもつ凄腕ウイルスハンターである、神原恵弥シリーズの第二作目です。
『クレオパトラの夢』↓
前回読んだ恩田陸さんの『MAZE(メイズ)』同様、非常に面白いミステリー小説でした。
『MAZE』の感想はこちら↓
恩田陸『MAZE(メイズ)』感想※ネタバレ注意(素人小説書評)
二作続けて恩田陸さんの作品を読んでみて、すっかり恩田陸さんの小説にはまってしまいました。
『クレオパトラの夢』の感想を述べていきます。
※記事の性質上、ネタバレを含みます。
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どんな話?
世界を飛び回って活躍する、凄腕ウイルスハンター神原恵弥が訪れたのは、北海道のH市。
恵弥は双子の妹である和見を東京に連れ戻すためにH市を訪れますが、その裏には彼の仕事に関係する目的もありました。
それは、「クレオパトラ」と呼ばれるものを探し出すこと。
それを追おうとする恵弥ですが、妹に「クレオパトラ」について聞かれたり、他にも「クレオパトラ」を求めている人間がいることを知り、物語はどんどん複雑に絡み合っていきます。
「クレオパトラ」とは何なのか、恵弥はそれを見つけ出すことができるのでしょうか。
神原恵弥シリーズ第二弾の、傑作ミステリー小説です。
感想※ネタバレ注意
今回の『クレオパトラの夢』の舞台は、『MAZE』とは打って変わって日本国内。
そして本作の恵弥は、「クレオパトラ」を見つけ出すこと、和見を東京に連れ帰ること、この二つの目的をもって北海道のH市を訪れます。
早速ですが、「クレオパトラ」はとある伝染病のワクチンであると、恵弥や和見、他の登場人物たちは考えていました。
その「とある伝染病」とは、歴史上で多くの人々を苦しめてきた天然痘です。
北海道のH市では、ひっそりと天然痘のワクチンが作られていたとして、話は進んでいきます。
わた指摘に今作ですごいと思ったことは、話の中で起こる様々な事象が、結果的にきれいに一つの点で交わり、真相を浮かび上がらせること。
恵弥が「クレオパトラ」を探す過程で、妹の和見が行方不明になったり、多田という同業者が登場することで話が右往左往してしまいますが、結果的に一つの点で交わるのです。
特に、いろいろな人間が登場し、それぞれの思惑が出てくるのにもかかわらず、最終的には「クレオパトラ」にうまくつながっているというのが、かなり巧い話になっていると思いました。
ちなみに、恵弥たちがたどり着いた「クレオパトラ」の正体は、天然痘のワクチンではなく、天然痘ウイルスそのものだったのです。
H市では長い間ひそかに、天然痘ウイルスの研究が行われていたという結論になりました。
また、まんまとひっかかってしまいましたよ。
『MAZE』の時と同様、一度目的の答えを示し「こうだ」と思わせておきながら、結果正体は違いましたと読者を驚かせる恩田陸さんの術中に、まんまと引っかかってしまいました。
やはり恩田陸さんの文章を読んでいると、簡単にミスリードにひっかかってしまうのです。
おそらく、恵弥を中心に登場人物たちを代わり代わり登場させることで、一気に読者に情報を与えることで、最終的な「クレオパトラ」の正体に気づけないのでしょう。
ということは、結局恩田陸さんの術中にはまっているということですね。
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『MAZE』と『クレオパトラの夢』と続けて読みましたが、神原恵弥が好きなってしまいました。
超一流エリートの男性が女言葉で話す。
今更ながら、この設定がものすごく面白いということに気づきました。
確かに近年、男言葉や女言葉という境が、曖昧になってきているなとは感じています。
ですが神原恵弥の場合は、女兄弟の中で育ってきたために、自然と女言葉を話すようになったという設定なのです。
意図して女言葉を話しているのではなく、自然と口から出てくるのです。
この恵弥のような男性って、実際いるものなのでしょうか。
女兄弟の中で育ったため、性格が女性よりだという人は、かなりいるはずですが、根本的に女言葉を話すという人は稀だと思います。
まとめると、『クレオパトラの夢』は登場人物たちが「クレオパトラ」の正体を描き出していく、傑作ミステリー小説というところです。
できれば『MAZE』を読んだ後に、『クレオパトラの夢』を読んでみてください。
まとめ
恩田陸さんの『クレオパトラの夢』は、『MAZE』同様神原恵弥が大活躍する、傑作ミステリー小説です。
ミステリー小説が好きという方に、かなりおすすめな作品になっています。
恩田陸さんは数々の作品を世に放ち、直木賞や本屋大賞も受賞されている、大活躍中の小説家です。
今後の活躍を期待しつつ、他の作品も読んでみたいと思います。
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